Virtuosのグローバル開発、Art、VFXチームからの学習とベストプラクティスに関する一連の定期記事の9番目です。

今回の記事では、テクニカルディレクターのフェルナンドカスティーヨとテクニカルグループプロデューサーのホイグエンが、COVID-19とリモート作業への取り組みについて語ります。

COVID-19のパンデミックが世界中に広まるにつれ、世界中の何百万人もの人々が、ウイルスの蔓延を遅らせるために、ある時点で社会的隔離に取り組んできました。社会的規範におけるこの大規模な変化は、結果として企業に操業の一時停止または必要な手段による迅速な適応を余儀なくさせました。生産と流通の手段としてコンピューターに大きく依存している数少ない業界の1つとして、Sparx * などのデジタルエンターテインメント企業は、遠隔作業の取り決めを迅速に実装することにより運営を続けています。

Sparx * の場合、自宅で仕事をするということは、主にセオリーとしてのみ考えられた概念でした。機能させるために必要なすべての要素は入手可能でしたが、明確なプロセスはなく、試行されてはいませんでした。

本記事の執筆時点で、Sparx *は、今年の4月にすべてのスタッフの3週間の自主的な在宅勤務の後、スタジオを再開しました。COVID-19リスクは、完全に根絶されたわけではありませんが、ホーチミン市(Sparx *が所在する地域)の企業がすでに業務を再開し始めているほどまで減少しています。

全体として、リモートでの作業は成功しましたが、その過程で多くの教訓が得られました。この記事では、これらの発見についてさらに詳しく説明します。

状況

Sparx *にとっての最初の危機は、旧正月のお祝いに続く数日の間に表面化しました。

この時までに、コロナウイルスはすでにスタジオ管理者によって主要な問題として認識されていたため、感染リスク軽減のための対策に関する議論が促されました。

スタジオ全体を閉じるというアイデアは初期の段階で浮かびましたが、次の理由により結局破棄されました。

  • スタジオを閉鎖すると、契約が失効し、Sparx *の評判が損なわれ、結果としてクライアントが失われる可能性があります。
  • ロックダウンが長引いた場合、業界の他の会社に起こったように、一部のスタッフは給与削減/無給休暇を取る必要があるかもしれません。
  • 稼働していないスタジオは、閉鎖期間中は新しいプロジェクトを確保する手段がないことを意味し、現時点では明確な終わりが見えていませんでした。

他の唯一の選択肢は、人々を自宅に送り、在宅勤務を許可することでスタジオの運営を継続することでした。この提案はすぐに多数の支持を得て、実際に実行するための緊急対策チームが結成されました。

数日のうちに計画が作成され、その週末にテストが始まりました。

ケーススタディ:Riot Games

Riot Gamesは、COVID-19の状況に関するSparx *のステータスについて問い合わせを行った最初のクライアントの1つでした。当時は、完全なリモート作業に移行する計画が策定されたばかりであり、スタジオの意図について通知を受ける最初のクライアントの1つでした。Sparx *は、セキュリティ対策と、完全なリモート作業に移行した場合に予想される生産性への影響予測を共有しました。

Riot Gamesのプロジェクトに取り組んでいるチームをこの対策プランの先頭に立つよう選択したのは、いくつかの要因に基づいていました。

  1. Riot Gamesは、スタッフの健康に関する明確な懸念を示しました。 ミーティング全体を通じて、Riot Gamesは生産性よりもSparx *のスタッフの安全を確保することの重要性を継続的に強調しました。Riotは、スタジオがまだなじみのない領域であったとしても、完全なリモート作業を実装するという提案を受け入れました。
  2. Riotのプロジェクトマイルストーンを厳守することは重要でした。 Riotが提供するのはライブサービスゲーム(League of Legendsなど)であるため、将来のコンテンツはすべて事前に計画されており、制作の遅れはRiotにとって非常に混乱を招きます。したがって、Riotの生産パイプラインが中断せずに継続できることを保証することが重要でした。
  3. Riot GamesはSparx *を重要なパートナーと考えています。2社のユニークな関係により、プロジェクトには慎重な管理が必要であると考えました。

リモートワーキングの実装:問題と解決策

リモートの作業手配の計画、テスト、実行全体で3つの異なる問題が発生しましたが、その後、さまざまな方法で解決されました。

技術的な課題

外部開発者として、Sparx *は、無数の作業スコープ、ツール、およびゲームエンジンを含むプロジェクトを処理することが多く、正しく機能させるためには固有の準備が必要になります。

標準的なオフィス環境では問題ではありませんが、一部のゲームエンジンの非互換性は、リモート作業で処理する場合に特に問題になることがわかりました。これには、複数のアプリケーションの使用をサポートできる適切な構成を見つけるための広範なテストが必要でした。

スタジオが予期するもう1つの潜在的な問題は、モニター、接続ケーブル、描画用タブレットなど、スタッフが自宅でアクセスできる機器の品質でした。先制措置として、Sparx *の人事部門は最初の数日以内にオンライン調査を実施してスタッフの準備状況を確認しました。必要なコンポーネントを所有していないことが判明した場合、スタジオは必要に応じて貸し出しを行いました。

ハードウェアに加えて、すべてのスタッフは、ワークフローが中断されないようにするために、いくつかのリモートデスクトップアプリケーションに慣れる必要がありました。

  • TGX: 帯域幅を増やしてパフォーマンスを最適化するために圧縮アルゴリズムを利用するリモートデスクトップアプリケーション。これにより、Sparx *のアーティストとアニメーターは、オフサイトワークステーションとのインターフェース時に、接続の問題による中断なしに作業を進めることができました。
  • RemoteFX: Microsoftによる拡張機能であるRemoteFXは、リモート接続を介したグラフィックス情報の転送を最適化するリモートデスクトッププロトコルであり、スタジオのFXアーティストがすぐに利用できる利点があります。
  • Datacloak: サーバーおよびワークステーションに格納されているデータを保護するために使用される暗号化プログラム。

IT機器に接続できるよう、信頼性を確保し十分に確立されたサポートシステムが必要であり、次のアクションを実行しました。

Zalo (ローカルソーシャルコミュニケーションプラットフォーム)でのテクニカルサポートグループチャットの作成、およびリモートの作業能力に影響を与える技術的な問題に対処することのみを目的として、1人のテクニカルアーティストと1人のITエグゼクティブを各チームに割り当てました。

これらの問題点の解決により、Sparx *はすべてのスタジオスタッフのリモート作業の実装を進めることができました。

IP 保護

外部開発者として、Sparx * でのセキュリティとクライアントのIP機密性は最も重要です。

したがって、Sparx *は各プロジェクトごとにクライアントに連絡し、スタジオ全体にリモート作業を実装する計画をクライアントに通知し、正式に許可を求める前にその実行の詳細を報告しました。許可が得られた場合にのみ、Sparx は在宅勤務を実行しました。

スタジオにとって幸いなことに、Riot Gamesをはじめ、すべてののクライアントから、在宅勤務の同意を得ることが出来ました。3週間の在宅勤務の結果として、Sparx *はすべてのITセキュリティ証明書を維持することに成功しました。適切な技術ソリューションを使用してリモートで作業することは安全であり、Sparx *は自律性のあるスタッフにも支えられながら対処することが出来ました。

生産性

共有オフィス環境での作業から自宅からリモートでの作業への移行には、考え方の変更が必要です。リモート作業の取り決めの最初の数日で、Sparx *はスタッフ間の生産性の低下に遭遇しました。

しかし、この落ち込みは一時的なものである可能性があることを認識しました。これは、初めて自宅で仕事をするという「カルチャーショック」によってもたらされました。生産性の向上を促すために、スタジオは、アーティストが割り当てられたマイルストーンを達成した場合報酬を得られる期間限定のイベントなど、いくつかの取り組みを開始しました。

これらの措置は、相互の励ましと絶え間ないコミュニケーションというスタジオの文化によって補完され、最終的に生産性率の回復をもたらしました。リモートの作業の結果として、Sparx *はチームに課された全ての任務を完成したことがわかりました。

Virtuos- Sparx *のWFH (Work From Home)の移行は非常にスムーズであり、プロセス全体にわたって十分に文書化されていました。問題のステータスと対処内容は常に最新の状態で報告されていました。完全な移行完了後、社内の開発者に期待するのと同じリズムに戻るまでは1週間でした。感動!」と語るのは、ライアットゲームズのプロデューサー、Sarah Reinsteinです。

結論

リモート作業での経験からいくつかのデータを収集出来ました。

  • Sparx *はスタッフを20〜25名単位で自宅に戻し、最後の人員はベトナム政府によってソーシャルディスタンスの命令が出される直前に戻しました。
  • スタッフの安全のため、合計400名以上のスタジオメンバーが帰宅しました。
  • リモート作業の計画から実装にかかった合計時間は、2〜3週間でした。
  • 遠隔地での作業は合計3週間続きました。
  • 全体的な生産性は100%のままでした。

スパークス*は様々なトラブルシューティングを通じて完全なリモート作業を達成しました。成功のための主な要因は各メンバーの結束です。

Sparx *は、生産部門だけでなく、管理部門、経営、人事、IT、内部コミュニケーションなどのチームがあります。彼らのサポートにより、スタジオは全体として、急速に変化する状況をモニタリングし、それに対応することができました。スタジオ全体のコミュニケーションも完全に透明であり、一貫したメッセージで不安を和らげ、噂等も払拭することができました。

管理チームの取り組みに加え、スタジオカルチャー自体も、リモート作業への円滑な移行を確実にする上で重要な役割を果たしました。各スタッフの相互の協力とモラルの維持という基本的感覚により物理的に孤立した上程であっても団結することが出来ました。Sparx *にとって、これがすべてを可能にした秘密の要素でした。

 

Virtuosについて

2004年の設立以来、Virtuosはゲーム開発と3Dアート制作におけるリーディングカンパニーです。現在はシンガポール、中国、ベトナム、カナダ、フランス、日本、韓国、アイルランド、アメリカで業務を行っており1700名の多様な人材が在籍しています。アート、エンジニアリング、ゲームデザイン等各分野のスペシャリストが最先端のテクノロジーとツールを使用し、世界中のクライアント様とゲームクリエーションの未来を創造出来るよう日々業務を行っています。これまでにゲーム業界を牽引する20社の内18社様とお取引させていただいており、1300を超えるプロジェクトでゲーム開発とアート制作における様々なサービスを提供しています。詳しくは www.virtuosgames.com/jaをご覧くださ