エクスターナル・デベロップメント・スタジオVirtuosが果たすべき役割とは。CEOのインタビューが公開に

Virtuos 創業者/CEO ジル・ラングリュー氏
 シンガポールに本社を構え世界各国にスタジオとオフィスを持つVirtuosは,ビデオゲーム開発および3Dアートの製作を請け負う会社だ。同社はさまざまなゲームタイトルにかかわっており,世界のゲームパブリッシャ上位20社のうち18社となんらかの形で取引を行っているという。

 そんなVirtuosに,GamesIndustry.biz Japan Editionは2020年6月にメールインタビューを行っているが,今回はVirtuos CEO ジル・ラングリュー氏が質問に答えるという記事が公開されたので掲載しよう。前回のインタビューから1年が経ち,なにがどのように変わったのかに注目しつつ読み進めてほしい。


Q1. 前回Virtuosにインタビューしてから1年以上が経ちました。 Virtuosとは何か、再度お話しいただけますか?

 このような機会をいただき、本当にありがとうございます。またお会いすることができてとても光栄です。確かに今年は面白い年でしたね。

 要約すると、Virtuosはシンガポールに本社を置き、アジア、ヨーロッパ、北米の14の拠点で事業を展開している世界有数のゲーム開発会社です。2004年に設立され、現在2,500人以上のフルタイムの従業員を擁し、AAAコンソール、PC、およびモバイル用のゲームタイトルの開発と3Dアート制作を専門としています。

 創業以来、Virtuosは、AAAゲームのコアゲームコンテンツの外部開発を中心に、ユニークな価値提案を行ってきました。また、業界で最も成功した複数のゲームシリーズに、統合されたエンドツーエンドのゲーム開発ソリューションを提供するために、バリューチェーンを徐々に拡大してきました。

 Virtuosの目的は、「良いゲーム開発を皆様と共に」することです。開発パートナーやクライアントと統合し、世界中のスタジオ間で相互運用し、全員が同じプラットフォーム、プロジェクト管理、コミュニケーションツールを使って作業します。前回した会話を思い出していただきたいのですが、Virtuosは、クライアントのゲームをより良く、より大きく(より壮大なゲーム内世界、より多くのレベルと詳細なアセット、追加のゲームプレイ機能等を含む)して、カスタマーにより多くのコンテンツを提供したり、より多くのプラットフォームでプレイできるようにすることで、クライアントがより多くの収益を得られるようにすることに引き続き注力しています。


Q2. 前回、『XCOM 2』の移植に関する課題について話しましたが、Virtuosはこれまで多くのプロジェクトの移植作業に携わってきました。 その中でも特筆すべきものを教えていただけますか?

 多くの場合、ゲームタイトルのコア開発チームは、PCやNintendo Switch、PlayStation 4、5などのコンソール全体でゲームの発売時に、全てのプラットフォームをカバーすることはできませんが、Virtuosはそんなときにお役に立てます。Virtuosと提携することで、あらゆる規模のゲームデベロッパーやパブリッシャーが、自社のゲームをより多くのプラットフォームで展開させ、より高い投資収益率を達成することができます。Virtuosは既存のゲームタイトルをNintendo Switchに対応させることに成功した最初のデベロッパーの1つとして、これまでに15を超えるタイトルをNintendo SwitchとPlayStation 4に対応させており、現世代のコンソール用にいくつかのリマスターを進めています。

 光栄なことに、私たちは『バイオショックコレクション』や『アウター・ワールド』など、後にSwitchのトップセラーとなった優れたゲームをSwitchに対応させることができました。また、『PUBG』をGoogle Stadiaに対応させたり、『コール オブ デューティ ブラックオプス コールドウォー』へのマップ制作の提供など、現在最大級のオンラインゲーム2つに携わることができたのも刺激的でした。

 また、今年の初めには名作『デモンズソウル』のPlayStation 4および5向けの復活に貢献しました。私たちのチームは、イントロのシネマティックを完全再現する際、大規模な破壊やバトルアクション、最高品質のアートアセットとアニメーションを用いて4Kシネマティック体験を提供しました。このリメイク版が、本作やソウルシリーズのファンの皆様の10年にも及ぶ長い待ち時間を終わらせ、新しい層のプレイヤーに本作を発見して楽しんでいただく機会を提供できたことを特に嬉しく思っています。


Q3. Virtuosは、これまでに見たことのないような大規模な投資を獲得したばかりです。これはビジネスにとってどのような意味を持つのでしょうか?

 はい、今年の9月、Virtuosはベアリング・プライベート・エクイティ・アジア(BPEA)のファンドから1億5000万米ドルの投資を獲得しました。これを発表できることをとても嬉しく思います。これによって、BPEAは、2018年のインベスターである3D Capital Partnersや、70%以上の資本を保有する当社の経営陣と並んで、最大の外部株主となりました。

 Virtuosは独立性を維持しており、AAAタイトルのコアコンテンツの外部開発に注力しています。今回の投資によって2つのことが期待できます。1つ目は、さらに大規模でより複雑なゲーム制作のための共同開発、または共同投資に関連することです。それを支えるのは、研究開発への投資の増加と、Virtuosのビジネスオペレーション全体のデジタル化による品質、スピード、セキュリティの向上です。

 2つ目は、グローバル展開計画を加速させ、世界中のゲームが作られる主要な拠点に、より多くの戦略的プレゼンスを確立することです。これによって当社は業界最大手になるだけでなく、最も連携しやすい外部デベロッパーとして、クライアントと同じタイムゾーンで作業をし、パートナーシップに伴う摩擦を軽減することができます。


Q4. そして、これは日本にとって何を意味するのでしょうか? ここで、市場におけるVirtuosの役割について教えてください。

 前述したように、私たちは、ゲームが作られる世界の主要拠点すべてに事業展開したいと考えており、当然、これには日本も含まれます。私たちの最新のスタジオはフランスのリヨンにあり、アジアでは中国、韓国、シンガポール、ベトナムに拠点があります。2022年には日本にもスタジオを設立し、パートナーとの距離を縮め、より一体感のある仕事をすることを目標としています。Virtuosは、建設または購入するスタジオが、私たちのグローバルネットワーク内に統合され、適切に相互運用できることを保証します。


 2009年には、日本のデベロッパーやパブリッシャーとの取引を開始し、ゲーム市場のコンサルタント会社であるカイオス株式会社(Kyos Co., Ltd.)とパートナーシップを結び、現地でのサポートと、よりシームレスな体験をクライアントに提供してきました。また、2011年には、現在日本のアカウントマネジメント・ディレクターである橋口浩之を事業開発チームに迎え、アートプロジェクトの監修を行っています。また、2012年に入社した中川亮は、ゲームプロデューサーとして日本での共同開発プロジェクトを担当しています。このように、日本のプロジェクトにおけるコミュニケーションやオンボーディングをサポートしてくれる頼もしいチームメンバーを揃えています。

 私たちは、バンダイナムコ、カプコン、コナミ、ソニー・インタラクティブエンタテインメント、スクウェア・エニックスなどの日本のクライアントと提携できたことを、大変光栄に思っております。現在制作中のゲームに関する情報は共有できませんが、発売された際にはご紹介できることを楽しみにしています。


Q5. 前回、ゲーム開発におけるAIの活用についてお話しました。これについて最新の見解をお聞かせください。

 クラウドコンピューティングやAIなどの技術は、私たちのゲームに対する考え方、デザイン、開発方法にますます影響を与えています。Stadiaの『PUBG』で実証されたように、クラウドゲーミングは、クロスプラットフォームでのプレイをサポートし、ハードウェアの必要性を下げることで、より多くの人々がゲームにアクセスできるようになります。また、クラウドコンピューティングは、リモートでの共同開発にも対応しており、開発チームが各自自分の好きな場所からリモートで操作をしながら、ビルドを一緒に確認しあうことができます。

 当社の研究開発チームは、アート制作やゲーム開発のプロセスを加速し、効率化するために、AIを搭載した制作ツールの開発に引き続き注力しています。昨今のゲーム業界の成長とゲーマーの裾野の広がりを考えると、AIを活用するなどして革新的な方法を模索し、需要の増加に応じてより多くのコンテンツを開発していくべきだと考えています。


Q6.最後に、COVID 19のパンデミックは、ほぼすべての業界に大きな影響を及ぼしました。 Virtuosにはどのような影響があったのでしょうか? また、日本の復興においてテクノロジーが果たすべき役割は何だと思いますか?

 既存のグローバルオペレーションの性質上、私たちは有利な立場にあります。当社のスタジオはこれまでも同じプラットフォーム上でデジタル的に密接に連携してきたので、それぞれの市場でロックダウンが始まった際もリモートワークへの移行を容易に実施することができました。 また、急成長する当社の事業をサポートするために、今年のリヨンにスタジオ新設や、昨年のCounterPunch Studiosを買収 等、地理的な成長と拡大を続けています。

 ゲーム産業とそのコンテンツへの需要が拡大し続ける中、ゲーム業界は日本の技術革新と経済成長、そしてSociety 5.0のビジョンを支える役割を果たすことができます。 幸いVirtuosは高成長産業に携わっており、これまでもイノベーションの原動力となる人材の育成・開発の重要性を常に強調してきました。私たちは、ゲームをより良いものにし、ゲーム製作の方法を改善することで、日本のクライアントと提携して最高品質のゲームでプレイヤーを喜ばせることができるのを楽しみにしています。


Virtuos公式サイト